タマリンド
先日オフィスで仕事をしていると、スタッフの寛人さんがタマリンドの実をおやつに分けてくれました。茶色く熟したタマリンドの実は、タイ人の好むお八つ。カラカラに乾いた太った豆の鞘のような実の外皮を割ると、中にねっとりしたあんず色の果肉が詰まっています。味は干し柿に似た素朴な甘さで、つい「もうひとつ…」と後をひく懐かしい味。
タイにいると、色々なところでタマリンドに出くわします。木はよく葉が茂るので、街路樹として道路わきや公園、お寺にもよく植えられています。果肉は調味料と
して料理に使われるほか、お菓子やジャム、チャツネ、お酒も作れるそうです。タイの人達は、熟す前の酸っぱくて渋みのある緑色の実も、特製のたれを付けて美味しく食べます。果肉は薬効があり、お通じをよくする他、解熱剤、消化薬、アルコール中毒にも効果があるそう。若い葉や花も食べることができ、バーンロムサイの保母ティムさんの十八番、タマリンドの葉のサラダ(ヤム・マッカーム)は、少し酸味のある葉っぱに炒めたにんにくと挽き肉の油分がからんだ絶妙の美味しさです。幹を輪切りにしたものはまな板に。酸味の強い青い実の汁は金属磨きとしても有名。美肌効果もあるそうで、私が今使っているシャンプーや石鹸もタマリンド成分の入ったものでした。
数年前、まだタイにボランティアをしにやって来るとは夢にも思わなかった頃、『タマリンドの木』(池澤夏樹/著)という本を読みました。タイの難民キャンプで幼稚園の運営に携わっている女性と恋に落ちた主人公が、彼女と彼女の暮らすタイを知るうちに自分の生活を問い直し、最後に彼女と一緒にタイで全く新しい生活を始める、というストーリー。主人公の男性が、タイで電車に乗った際に向かいのタイ人にもらったお八つが、タマリンドの実でした。初めてこの本を読んだときは、タマリンドが何なのかよく分からず「どんな味なんだろう?」と想像をふくらませたものです。
こちらに来て、実際に何度もタマリンドの実を食べましたが、実は自分で買ったことは一度もなく、いつも誰かに分けてもらって食べています。タマリンドの、干した果物のような穏やかな味。なんとなく、しょっちゅう「お八つ」と言ってタマリンドを分けてくれる、タイの人達の気質に通じるものがある気がします。
記 春子
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